「あの日のことは、心をくいで打たれるような拷問でしかない」 大学部活内性加害事件が問う社会の認識と法の課題
![東京地裁](https://plat-go.com/wp-content/uploads/2024/12/スクリーンショット-2024-12-28-16.42.47.png)
「あの日のことは、心をくいで打たれるような拷問でしかない」。ある大学生が部活内で受けた性加害の被害を訴え、東京地裁で先輩4人が強制わいせつ罪で裁かれました。この事件は、男性同士の性加害の難しさや社会的認識の課題を浮き彫りにしました。
部活のノリが性加害に
被害者の男性は大学の体育会系部活に所属し、男子部員が少ない環境で「いじられ役」として先輩4人から怒鳴られたり、飲酒を強要されたりする嫌がらせを受けていました。事件が起きたのは2022年3月、春合宿の宿泊施設でのことです。
![男性が性暴力被害を相談しなかった理由](https://plat-go.com/wp-content/uploads/2024/12/スクリーンショット-2024-12-28-16.42.21-1024x570.png)
深夜に部屋のドアが激しくたたかれ、先輩たちによって両手足を持ち上げられ、談話室に連れて行かれました。そこで床に押さえつけられ、衣服をずらされて胸や陰部に歯磨き粉を塗られました。抵抗する被害者をよそに、先輩たちは笑いながら写真を撮り続けました。この悪夢のような時間は約40分続きました。
事件後、被害者は部活を辞め、大学を休学。日常生活にも支障をきたすようになりました。2023年、旧ジャニーズ事務所の性加害問題をきっかけに自分も性加害を受けたと認識し、警察に相談しました。その結果、先輩たちは2024年に強制わいせつ罪で逮捕されました。
法廷での被告の主張
東京地裁での公判では、先輩の一人が証言台で「被害者の人生をめちゃくちゃにしてしまった」と謝罪しました。しかし、別の被告は「その場のノリでじゃれ合うことはよくあった」と述べ、当時の行為を正当化するような発言も見られました。「被害者も楽しんでいると思った」との言葉が飛び出すなど、加害者側の認識の甘さが浮き彫りになりました。
判決と裁判官の指摘
2024年9月下旬、被告4人には懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決が下されました。判決では、行為を「強い屈辱感を与え、尊厳を踏みにじる悪質なもの」と断じ、被害者を一方的に辱めた行為を厳しく非難しました。裁判官は「あなたたちの行為に対する社会的な評価は判決の通り」と述べ、被告たちに深い反省を求めました。
男性の性被害の認識不足
男性同士の性加害は、長らく理解されにくい状況が続いています。2017年の刑法改正で「強姦罪」から「強制性交罪」に変更され、2023年には「不同意性交罪」や「不同意わいせつ罪」に統合されるなど、法整備は進んでいます。しかし、法務省の2023年統計では、男性が被害者となった不同意性交事件は100件、強制わいせつ事件は256件に上っています。
京都橘大学の濱田准教授によれば、男性同士の性加害は性的欲求よりも支配欲求を満たす目的が多く、男性特有の「強さ」のイメージが被害者の声を上げづらくしていると指摘しています。近年、男性の性被害が認知される中で、長年胸に秘めていた被害を相談するケースが増えています。