イーロン・マスク、大国に翻弄される? ロシアがスターリンク提供に圧力、台湾は独自衛星網構築へ

イーロン・マスク率いるスペースXの衛星インターネットサービス「スターリンク」が、米ロ中という世界三大国の思惑が交錯する地政学の舞台に躍り出た。ロシアがスターリンクの台湾への提供を阻止しようと働きかけ、台湾は独自の衛星通信網構築に乗り出すなど、スターリンクを巡る国際的な駆け引きが激化している。
【ロシアの要請とマスク氏の対応】
2022年後半以降、マスク氏はプーチン大統領やその側近と頻繁に接触し、意見交換を重ねてきた。その中で、ロシア政府は2023年、スターリンクの台湾へのサービス提供を断念するようマスク氏に要請した。これは、ロシアが中国との関係強化を図る中で、マスク氏とのパイプを利用して中国側に配慮を示す意図があったとみられる。
マスク氏は、ウクライナ侵攻当初はウクライナ側にスターリンクを無償提供し、国際社会から高い評価を得た。しかし、その後はロシア寄りの発言を繰り返したり、ウクライナの反攻作戦への利用を制限したりするなど、そのスタンスは一貫していない。
【台湾の対応と独自の衛星網構築】
台湾は、スターリンクのサービス提供を許可しておらず、有事に接続が保証されないリスクを懸念している。また、マスク氏が中国との関係を重視していることも、台湾としては不安要素となっている。
このため、台湾は欧州の企業と連携し、独自の衛星通信網を構築する計画を進めている。これは、米中対立が激化する中、台湾が自らの通信インフラを強化し、外部への依存度を下げるための重要な取り組みと言える。
【スターリンクが描く新たな通信地図】
スターリンクは、高速度・大容量のインターネット接続を世界中のどこにでも提供することを目指す野心的なプロジェクトである。しかし、その実現には、各国政府の規制や地政学的なリスクなど、多くの課題が立ちはだかっている。
スターリンクをめぐる最近の動向は、通信インフラが単なる技術問題ではなく、国家間の競争や外交関係に深く関わる問題であることを改めて示している。
【まとめ】
スターリンクは、世界の通信インフラを大きく変える可能性を秘めている一方で、その利用を巡っては、国家間の対立や利益相反が複雑に絡み合っている。今後も、スターリンクをめぐる国際的な駆け引きはますます激化していくことが予想される。
